育児短時間勤務が6時間なのはなぜ?理由を幅広く調査!

育児と仕事の両立を支援する育児短時間勤務制度では、1日の労働時間を原則として6時間に短縮することが育児・介護休業法で定められています。しかし、なぜ7時間でも5時間でもなく、6時間という時間が設定されているのでしょうか。

育児短時間勤務は2010年から全ての事業主に義務付けられている制度であり、3歳未満の子どもを養育する労働者が希望した場合に利用できます。この6時間という時間設定には、通勤時間、保育園の開園時間、社会保険の適用条件など、さまざまな背景と理由が存在します。

本記事では、育児短時間勤務が6時間なぜその時間に設定されているのか、法律の制定過程から実務上の理由まで幅広く調査しました。制度を利用する労働者や企業の人事担当者にとって、この時間設定の背景を理解することは、育児と仕事の両立をより円滑に進めるために役立つでしょう。

育児短時間勤務が6時間なのはなぜか?制度の背景

育児・介護休業法における6時間の規定

育児短時間勤務制度は、育児・介護休業法第23条に基づいて定められています。この法律では、3歳未満の子どもを養育する労働者が希望した場合、事業主は1日の所定労働時間を原則として6時間に短縮する措置を講じなければならないと規定されています。

正確には、「5時間45分から6時間まで」という幅を持たせた設定となっています。これは、企業によって所定労働時間が異なることを考慮したためです。一般的には8時間が所定労働時間ですが、7時間45分としている企業もあるため、そのような企業が2時間短縮した場合に5時間45分となります。

この6時間という時間設定は、2009年の育児・介護休業法改正により、2010年から全ての事業主に義務付けられました。それ以前は、企業の努力義務とされていましたが、少子化対策と女性の就労継続支援の観点から、法的義務へと格上げされたのです。

法律では「原則として6時間」と規定していますが、これは最低基準を示すものであり、企業がそれより短い時間や長い時間の選択肢を設けることを妨げるものではありません。実際、企業によっては5時間、7時間といった複数の選択肢を用意しているケースもあります。

制度制定時の労働者ニーズ調査結果

育児短時間勤務が6時間に設定された背景には、厚生労働省が実施した労働者のニーズ調査があります。この調査では、短時間勤務制度を利用したい労働者に対して、希望する勤務時間と実際に利用できる勤務時間について聞き取りが行われました。

調査の結果、希望する勤務時間と実際の勤務時間が合致する人数が最も多かったのは「5時間超から6時間以内」という時間帯でした。つまり、多くの労働者が6時間程度の勤務時間を希望していたことが、この時間設定の根拠の一つとなっています。

また、短時間勤務を利用したい期間についても調査が行われており、希望と実際が合致する人数と割合が総合的に多かったのは「3歳以上から小学校に上がる前まで」という期間でした。この結果から、制度の基本設計として「1日6時間」「3歳から小学校就学前まで」という枠組みが形成されました。

調査結果に基づいて6時間が設定されたことにより、制度は実際の労働者のニーズに即したものとなりました。労働者の声を反映した制度設計は、育児と仕事の両立をより実効性のあるものにする重要な要素です。

さらに、企業規模別の調査でも、6時間という時間設定が最も多く採用されていることが明らかになっています。ある調査では、育児短時間勤務の設定勤務時間について、68%の企業が6時間を採用していると報告されています。

法律制定の歴史的経緯

育児短時間勤務制度の歴史を振り返ると、1991年に育児・介護休業法が制定されたことに始まります。当初は「子が1歳未満の労働者」を対象に、短時間勤務、フレックスタイム、始業終業時刻の変更などの選択肢を提供するものでした。

2002年には対象者が「3歳未満の子を養育する労働者」に拡大されました。これは、育児と仕事の両立支援をより手厚くする必要性が認識されたためです。しかし、この段階ではまだ企業の努力義務に留まっていました。

2009年の法改正により、短時間勤務制度の導入が全ての事業主に義務付けられました。そして2010年から、1日の所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度がすべての事業主の義務となったのです。この改正は、少子化対策の一環として、育児を理由とする退職を防止することを目的としていました。

2012年には、努力義務の期間が小学校就学前まで延長されました。つまり、3歳未満は義務、3歳から小学校就学前までは努力義務という二段階の構造になりました。これは、保育園の待機児童問題や小1の壁といった課題に対応するためです。

2025年の法改正では、3歳から小学校就学前までの期間について、複数の選択肢の中から2つ以上を企業が提供することが義務付けられました。選択肢には、始業時刻等の変更、月10日以上のテレワーク、保育施設の設置運営、養育両立支援休暇、短時間勤務制度が含まれています。

6時間が標準となった社会的背景

育児短時間勤務が6時間に設定された背景には、日本社会が直面していた深刻な問題がありました。2000年代に入り、少子化が加速し、出生率の低下が社会問題として認識されるようになりました。

女性の就労率は上昇していましたが、出産を機に退職する女性が多く、いわゆるM字カーブと呼ばれる労働力率の推移が問題視されていました。育児と仕事の両立が困難であることが、出産後の退職の主な理由の一つでした。

企業側も、優秀な人材が育児を理由に退職してしまうことは大きな損失でした。採用コストや教育コストをかけて育成した人材を失うことは、企業の競争力低下につながります。人材の定着と活用が、企業経営の重要課題となっていました。

また、核家族化が進み、祖父母などの家族による育児サポートが得られにくい環境になっていました。保育園などの社会的支援と、職場における柔軟な働き方の両方が必要とされる状況でした。

政府は、女性の能力発揮と少子化対策の両面から、育児と仕事の両立支援を重要政策と位置付けました。6時間という時間設定は、こうした社会的要請に応える形で決定されたのです。この時間であれば、保育園への送迎を含めた育児の時間を確保しつつ、職場でも一定の業務を遂行できると考えられました。

育児短時間勤務が6時間なのはなぜか?実務上の理由

通勤時間と保育園送迎を考慮した設定

育児短時間勤務が6時間に設定された実務上の重要な理由の一つは、通勤時間と保育園の送迎時間を考慮したものです。総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」によると、小学校就学前の子を持つ会社員の通勤時間平均は往復1時間(片道30分)です。

しかし、首都圏では平均2時間(片道1時間)となっており、地域によって大きな差があります。さらに、退社後の帰宅準備時間も考慮すると、16時に仕事が終わることが必要だと考えられました。9時から16時までの勤務で、休憩1時間を除くと、ちょうど6時間勤務となります。

保育園の開園時間も重要な要素です。一般的な認可保育園の閉園時間は19時とされていますが、多くの保育園では18時30分以降が延長保育の時間帯となり、追加料金が発生します。例えば、練馬区の区立保育園では、18時30分から19時30分の延長保育料金は月4,000円、19時30分から20時30分は月8,000円となっています。

経済的負担を避けるためには、18時30分までに保育園に迎えに行くことが望ましいと言えます。16時に退社し、片道30分から1時間の通勤時間を経て、17時から17時30分に帰宅し、保育園に迎えに行くというスケジュールを考えると、6時間勤務が適切な時間設定となります。

また、朝の保育園への送りも考慮する必要があります。多くの保育園は7時から7時30分頃に開園しますが、子どもの準備や朝食の時間を考えると、9時始業で間に合うかどうかは家庭の状況によります。6時間勤務により終業時刻を早めることで、朝の準備に余裕を持つこともできます。

保育園の延長保育料金との関係

保育園の延長保育料金が、6時間という時間設定に与えた影響は大きいと考えられます。キッズラインの調査によると、一般的な認可保育園の閉園時間は19時ですが、実際には18時30分以降が延長保育の時間帯となる園が多いのです。

延長保育料金は、自治体や保育園によって異なりますが、月額数千円から1万円程度が一般的です。年間にすると数万円から十数万円の負担となるため、できれば避けたいと考える家庭が多いでしょう。

8時間勤務の場合、9時から18時までの勤務となり(休憩1時間含む)、退社後に保育園に迎えに行くと、通勤時間によっては18時30分を超えてしまう可能性が高くなります。特に首都圏では通勤時間が長いため、延長保育料金の支払いが避けられないケースが多くなります。

6時間勤務であれば、9時から16時までの勤務となり(休憩1時間含む)、通勤時間が1時間かかったとしても17時には保育園に到着できます。これにより、延長保育料金を支払わずに済む可能性が高くなります。

この経済的なメリットは、育児世帯にとって重要な要素です。短時間勤務により給与が減額される分、延長保育料金を節約できることで、実質的な収入減を抑えることができます。

また、延長保育を利用しないことは、子どもとの時間を確保することにもつながります。保育園での長時間保育は、子どもの心身の負担になる可能性もあり、できるだけ早めに迎えに行きたいと考える保護者も多いでしょう。

社会保険適用拡大との関連

育児短時間勤務が6時間に設定されたもう一つの重要な理由は、社会保険の適用条件との関係です。現在、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する会社員の勤務時間基準が、週30時間以上(正社員の3/4以上)から週20時間以上へと段階的に拡大されています。

2024年現在、51人以上の企業が適用対象となっており、徐々に拡大中で、全企業が対象になるのは2035年の予定です。この適用拡大が完了していない段階で、短時間勤務を6時間未満にすると、50人以下の企業規模では社会保険加入対象外となってしまう可能性があります。

1日6時間、週5日勤務の場合、週30時間となり、従来の社会保険適用基準をちょうど満たす計算になります。これより短くすると、中小企業では社会保険に加入できなくなる労働者が出てくる可能性がありました。

社会保険に加入できなくなることは、労働者にとって大きな不利益です。健康保険や厚生年金は、将来の年金受給額や医療費負担に直接影響します。特に厚生年金に加入できないことは、老後の生活設計に重大な影響を与えます。

そのため、短時間勤務を導入する際には、社会保険の適用を維持できる時間数にすることが重要でした。6時間という設定は、労働者の社会保険加入を確保するという観点からも適切な時間数だったのです。

今後、社会保険の適用拡大が完全に実施されれば(週20時間以上が全企業で適用)、理論的には6時間未満の短時間勤務も検討可能になるかもしれません。しかし、現時点では6時間が最も合理的な時間設定と言えます。

労働時間と生産性のバランス

育児短時間勤務が6時間に設定された理由には、労働時間と生産性のバランスという観点もあります。企業側から見ると、短時間勤務の労働者であっても、一定の業務を遂行してもらう必要があります。

6時間という時間は、集中して業務に取り組める時間として適切な長さだと考えられました。あまりに短い時間では、業務の引き継ぎやコミュニケーションに時間を取られ、実質的な作業時間が確保できなくなる可能性があります。

また、企業が業務の調整を行う上でも、6時間という時間は管理しやすい単位です。8時間勤務を基準として考えると、2時間短縮で75%の勤務時間となり、給与計算や業務分担の計算がしやすくなります。

労働者側から見ても、6時間という時間は、仕事にしっかり取り組めると同時に、育児の時間も確保できる適切なバランスです。あまりに短い勤務時間では、職場での存在感が薄れ、重要な業務から外される可能性もあります。

実際の調査でも、68%の企業が6時間を採用していることから、この時間設定が労使双方にとって受け入れやすいものであることがわかります。残りの企業では、6時間超7時間以内が2割を超えており、少しでも長い時間を勤務してもらうことで人手不足の解消につなげようとする動きも見られます。

まとめ:育児短時間勤務が6時間なのはなぜかについての総括

育児短時間勤務6時間設定の理由のまとめ

今回は育児短時間勤務が6時間なのはなぜかについてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。

・育児短時間勤務は育児・介護休業法第23条により、1日の所定労働時間を原則として6時間(5時間45分から6時間まで)に短縮することが定められている

・6時間という時間設定は2010年から全ての事業主に義務付けられ、3歳未満の子どもを養育する労働者が対象となる

・厚生労働省の調査で、希望する勤務時間と実際の勤務時間が合致する人数が最も多かったのは「5時間超から6時間以内」だった

・小学校就学前の子を持つ会社員の通勤時間平均は往復1時間、首都圏では2時間であり、16時退社が必要と考えられた

・9時から16時勤務で休憩1時間を除くと6時間勤務となり、保育園の送迎時間を確保できる

・一般的な認可保育園の閉園時間は19時だが、18時30分以降は延長保育料金が発生する自治体が多い

・延長保育料金は月額4,000円から8,000円程度であり、年間では数万円から十数万円の負担となる

・6時間勤務により16時に退社できれば、延長保育料金を支払わずに18時30分までに迎えに行ける可能性が高い

・社会保険の適用条件が週30時間以上であり、1日6時間週5日勤務で週30時間となり適用基準を満たす

・社会保険適用拡大は2035年に全企業対象となる予定であり、それまでは6時間が社会保険維持のために重要である

・企業の68%が6時間を採用しており、労使双方にとって受け入れやすい時間設定である

・6時間は集中して業務に取り組める時間として適切であり、生産性を維持できる

・8時間勤務の75%に相当する6時間は、給与計算や業務分担の計算がしやすい

・2009年の法改正により2010年から義務化され、少子化対策と女性の就労継続支援が目的だった

・企業は6時間以外の選択肢(5時間、7時間など)を設けることも可能であり、柔軟な対応が推奨されている

育児短時間勤務が6時間に設定された理由は、労働者のニーズ調査結果、通勤時間と保育園送迎の実態、延長保育料金の負担、社会保険適用条件など、多角的な要素を総合的に考慮した結果です。この時間設定により、育児と仕事の両立がより実現しやすくなりました。

企業や労働者は、この6時間という基準を理解した上で、個々の状況に応じて柔軟に制度を活用することが重要です。今後も社会状況の変化に応じて、より良い働き方が模索されていくでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました