「自分は子育てに向いていないのではないか」と悩む父親は少なくありません。子どもが泣いてもあやし方が分からない、おむつ替えがうまくできない、パートナーから育児への関わり方を指摘される、仕事が忙しくて育児に時間を割けないなど、様々な場面で自信を失ってしまうことがあります。特に初めての子育てでは、何をどうすればよいのか分からず、戸惑いや不安を抱える父親が多く存在します。
しかし、「子育てに向いていない」と感じることは、必ずしも父親としての資質が欠けているということを意味するわけではありません。多くの場合、育児スキルを学ぶ機会の不足、社会的な役割期待、仕事と育児の両立の難しさなど、様々な要因が複合的に影響しています。また、母親と父親では育児への関わり方や得意分野が異なることも自然なことです。
本記事では、父親が子育てに向いてないと感じる理由について、社会的背景や心理的要因を含めて幅広く調査します。さらに、そのような悩みを抱える父親ができる具体的な対策や、育児スキルの習得方法、活用できる支援サービスについても詳しく解説していきます。子育てに自信が持てない父親、パートナーの育児参加に悩む母親にとって、参考になる情報をお届けします。
父親が子育てに向いてないと感じる背景と理由
社会的背景と父親の役割の変化
父親が子育てに向いてないと感じる背景には、日本社会における父親の役割の歴史的変化があります。かつて日本では、父親は外で働き収入を得る「稼ぎ手」としての役割が中心で、育児は母親の役割とされてきました。この性別役割分業の考え方は、長い間社会に根強く存在し、父親が育児に積極的に関わることは一般的ではありませんでした。
しかし、1990年代以降、共働き世帯の増加、男女共同参画社会の推進、育児休業制度の整備などにより、父親の育児参加が社会的に求められるようになりました。2010年には「イクメン」という言葉が流行語大賞にノミネートされるなど、父親の育児参加を推奨する社会的な動きが加速しています。
このような急速な社会の変化により、現代の父親は「仕事も育児も」という二重の期待を背負うことになりました。しかし、自分自身の父親世代では育児に関わる姿をあまり見ていないため、具体的にどのように育児をすればよいのかモデルとなる存在が身近にいないという状況があります。育児の方法を学ぶ機会がないまま、突然父親になり、戸惑いを感じるのは自然なことと言えます。
また、職場環境も父親の育児参加を阻む要因となっています。長時間労働が常態化している職場、育児休業や短時間勤務を取得しにくい雰囲気、育児を理由に早退することへの周囲の目など、仕事と育児の両立を難しくする要素が多く存在します。このような環境下では、育児に十分な時間を割けず、結果として「自分は子育てに向いていない」という感情を抱きやすくなります。
子育てスキルの習得機会の不足
父親が子育てに向いてないと感じる大きな理由の一つは、育児スキルを習得する機会が圧倒的に不足していることです。母親の場合、妊娠期間中に母親学級や両親学級に参加したり、産院で授乳指導やおむつ替え指導を受けたり、産後も保健師や助産師による訪問指導を受けるなど、育児スキルを学ぶ機会が比較的多く用意されています。
一方、父親向けの育児教室や講座は、母親向けに比べると数が少なく、平日の日中に開催されることが多いため、仕事をしている父親は参加しにくい状況があります。また、育児書や育児情報サイトの多くは母親を主な読者として想定しており、父親が参考にしやすい情報が少ないという問題もあります。
さらに、実際に育児をする場面でも、母親の方が赤ちゃんと過ごす時間が長い場合、父親は「練習」する機会が限られてしまいます。おむつ替え、授乳(ミルク)、寝かしつけ、お風呂入れなど、育児の基本的なスキルは、繰り返し実践することで上達していきますが、その機会が少なければ、いつまでも自信が持てないままになってしまいます。
特に、赤ちゃんが泣いている理由を理解し、適切に対応することは、経験を積まなければ難しいスキルです。お腹が空いているのか、おむつが濡れているのか、眠いのか、暑いのか寒いのかなど、泣き方や状況から判断する力は、日々の関わりの中で育まれます。経験が少ない父親が、泣いている赤ちゃんを前に戸惑い、「自分には向いていない」と感じてしまうのは、スキル不足が原因であり、資質の問題ではありません。
仕事と育児の両立の困難さ
父親が子育てに向いてないと感じる理由として、仕事と育児の両立の困難さも大きな要因です。多くの父親は、家族の主な収入源として働いており、仕事の責任も重く、長時間労働を余儀なくされる場合があります。朝早く出勤し、夜遅く帰宅する生活では、子どもが起きている時間に家にいることが難しく、育児に関わる時間が物理的に確保できません。
厚生労働省の調査によると、日本の男性の育児休業取得率は年々上昇しているものの、2022年度で17.13%にとどまっており、女性の80%以上と比較すると依然として低い水準です。育児休業を取得しない理由としては、「職場の雰囲気」「収入の減少」「キャリアへの影響」などが挙げられています。
また、育児休業を取得できたとしても、その期間が短いことも問題です。女性の育児休業期間が平均10か月程度であるのに対し、男性は数日から数週間程度と極端に短く、十分に育児スキルを身につけたり、育児の大変さを理解したりする前に仕事に復帰してしまうケースが多く見られます。
仕事の都合で育児に関われない状況が続くと、父親は育児の「当事者」としての感覚を持ちにくくなります。パートナーや子どもとのコミュニケーションも減少し、家庭内で孤立感を覚えることもあります。そして、たまに育児をしようとしても、普段関わっていないためうまくできず、「やはり自分は向いていない」という思いを強めてしまう悪循環に陥ります。
母親との育児観の違いとコミュニケーションの問題
父親が子育てに向いてないと感じる理由には、母親との育児観の違いやコミュニケーションの問題も関係しています。育児に関する考え方は、それぞれが育った環境、価値観、性格などによって異なります。授乳のタイミング、離乳食の進め方、しつけの方法、遊び方など、様々な場面で夫婦の意見が食い違うことがあります。
特に、母親が育児の「正しいやり方」にこだわりが強い場合、父親のやり方を批判したり、やり直したりすることで、父親は自信を失ってしまいます。「そのやり方じゃダメ」「私がやった方が早い」といった言葉を繰り返し聞くことで、父親は育児への意欲を失い、「自分には向いていない」と感じるようになります。
また、育児に関する情報収集や学習の量にも、夫婦間で差が生じることがあります。母親は妊娠期から育児書を読んだり、インターネットで情報を調べたり、他の母親と情報交換したりと、積極的に知識を得ていることが多い一方、父親は情報収集の機会や時間が限られている場合があります。その結果、母親の方が育児に関する知識が豊富で、父親が「知らない」「分からない」状態に置かれることになります。
さらに、夫婦間のコミュニケーション不足も問題を深刻化させます。お互いの育児に対する考え方、期待、不安、疲労などを十分に共有できていないと、誤解やすれ違いが生じやすくなります。母親は「もっと手伝ってほしい」と思っているのに、それをうまく伝えられず、父親は「何をすればいいのか分からない」と感じているという状況は、多くの家庭で見られます。
育児は夫婦の共同作業であり、完璧にこなせる人はいません。お互いの違いを認め合い、試行錯誤しながら進めていくという姿勢が重要です。父親が「向いていない」と感じるのは、多くの場合、適切なサポートやコミュニケーションが不足しているためであり、本質的な資質の問題ではないことを理解する必要があります。
子育てに向いてないと感じる父親ができること
育児スキルの具体的な習得方法
子育てに向いてないと感じる父親でも、育児スキルは確実に習得できます。まず重要なのは、小さなことから始めることです。いきなりすべての育児を完璧にこなそうとするのではなく、おむつ替え、ミルク作り、お風呂入れなど、一つずつ確実にできるようにしていくアプローチが効果的です。
おむつ替えは、育児の基本中の基本ですが、最初は戸惑う父親も多いスキルです。おむつの構造を理解し、テープの止め方、お尻の拭き方、おむつかぶれのチェックなど、一連の流れを何度も実践することで、スムーズにできるようになります。動画サイトには、おむつ替えの手順を丁寧に解説した動画も多数公開されており、視覚的に学ぶことができます。
ミルク作りも、温度管理や量の調整など、慣れるまで時間がかかる作業です。粉ミルクの適切な量、お湯の温度、冷まし方、哺乳瓶の持ち方など、細かいポイントを一つずつ確認しながら練習しましょう。最近では、液体ミルクも市販されており、外出時や夜間の授乳時に便利です。
寝かしつけは、多くの父親が苦手とする育児タスクです。赤ちゃんの寝るタイミングや寝かしつけの方法は個人差が大きく、その子に合ったやり方を見つける必要があります。抱っこして揺らす、トントンと背中を叩く、子守歌を歌う、絵本を読むなど、様々な方法を試してみましょう。父親の低い声や大きな手のひらでのトントンが、赤ちゃんにとって安心材料になることもあります。
育児スキルを習得するためには、自治体が開催する父親向け育児教室やパパスクールに参加することも有効です。最近では、土日に開催されるプログラムも増えており、仕事をしている父親でも参加しやすくなっています。同じ立場の父親と交流することで、悩みを共有したり、情報交換したりすることもできます。
また、育児書や育児情報サイトを活用することも重要です。父親向けの育児書も徐々に増えており、「父親だからこそできる育児」「パパのための育児入門」など、父親の視点で書かれた書籍を参考にすると、実践しやすいヒントが得られます。
パートナーシップの構築と役割分担
子育てに向いてないと感じる父親にとって、パートナーとの良好な関係を築き、適切な役割分担を行うことは非常に重要です。育児は母親だけの仕事でも、父親だけの仕事でもなく、夫婦が協力して行うものです。そのためには、お互いの考えや気持ちを率直に話し合う時間を持つことが不可欠です。
まず、夫婦で育児に関する話し合いの時間を定期的に設けましょう。子どもが寝た後、週末の朝など、落ち着いて話せる時間を確保します。この話し合いでは、現在の育児分担がうまくいっているか、お互いに不満や不安はないか、改善したい点は何かなどを共有します。非難や批判ではなく、お互いの状況を理解し、協力するための建設的な話し合いを心がけることが大切です。
役割分担を明確にすることも効果的です。「母親が授乳、父親がおむつ替え」「平日は母親中心、週末は父親中心」など、それぞれが担当する育児タスクを決めておくと、お互いの負担が見える化され、公平感が生まれます。ただし、固定的に決めすぎると柔軟性を失うため、状況に応じて調整できる余地を残しておくことも重要です。
父親が得意な育児、母親が得意な育児を見極めることも大切です。例えば、父親は身体を使った遊びが得意、母親は絵本の読み聞かせが得意など、それぞれの強みを活かした役割分担をすることで、効率的かつ楽しく育児を進められます。「向いていない」と感じることすべてを無理に担当する必要はなく、得意なことを伸ばしていくアプローチも有効です。
また、母親に対して、父親のやり方を尊重してもらうよう伝えることも必要です。育児に「正解」はなく、様々なアプローチがあります。父親なりのやり方で子どもと関わることを認めてもらい、失敗しても学びの機会と捉える雰囲気を作ることが、父親の成長につながります。母親には、父親が育児をしているときに細かく指示したり、やり直したりせず、見守る姿勢を持ってもらうことが大切です。
感謝の気持ちを伝え合うことも、良好なパートナーシップには欠かせません。「おむつ替えてくれてありがとう」「お風呂入れてくれて助かった」など、小さなことでも感謝を言葉にすることで、お互いの育児への貢献を認め合うことができます。この積み重ねが、育児への意欲を高め、「向いていない」という感情を軽減させていきます。
父親支援サービスと相談窓口の活用
子育てに向いてないと感じる父親を支援するサービスや相談窓口も充実してきています。これらを積極的に活用することで、悩みを解決したり、育児スキルを向上させたりすることができます。一人で抱え込まず、外部のサポートを受けることは、決して恥ずかしいことではありません。
自治体の子育て支援センターや子育て世代包括支援センターでは、父親も相談できる窓口があります。育児の具体的な方法、子どもの発達に関する不安、夫婦関係の悩みなど、様々な相談に保健師や心理士などの専門職が応じてくれます。電話相談やオンライン相談に対応しているところもあり、仕事の合間や夜間でも利用しやすくなっています。
父親向けの育児サークルや交流会も、各地で開催されています。「パパ友」を作ることで、同じ悩みを持つ父親同士で情報交換したり、励まし合ったりすることができます。地域の子育て支援団体やNPO法人が主催しているイベントに参加してみるのも良いでしょう。最近では、オンラインでの父親コミュニティも増えており、地理的な制約なく参加できます。
企業の福利厚生制度も確認してみましょう。企業によっては、育児休業の促進、短時間勤務制度、在宅勤務制度、育児相談窓口の設置など、父親の育児を支援する制度を整備しています。これらの制度を活用することで、仕事と育児の両立がしやすくなります。また、上司や人事部門に相談し、働き方を調整することも検討してみてください。
自治体が発行する父親向けの育児ハンドブックや、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」のウェブサイトなども、有益な情報源です。育児の基本的な知識、父親の体験談、Q&A、利用できる制度などが分かりやすくまとめられています。これらの資料を読むことで、「自分だけが悩んでいるわけではない」と気づき、気持ちが楽になることもあります。
専門家によるカウンセリングやコーチングを受けることも選択肢の一つです。育児ストレスが深刻な場合、夫婦関係に大きな問題がある場合、自分自身の心の健康に不安がある場合などは、心理カウンセラーや臨床心理士などの専門家に相談することをおすすめします。多くの自治体では、無料または低額でカウンセリングを受けられる窓口を設けています。
父親の育児参加を支援する社会的な動きは、年々広がっています。「子育てに向いていない」と感じたときこそ、これらのサポートを活用し、育児スキルを向上させ、自信を持って子どもと向き合えるようになるチャンスです。完璧な父親を目指す必要はありません。子どもにとっては、一緒に過ごし、成長を見守ってくれる父親の存在そのものが、かけがえのない価値を持っています。
子育てに向いてないと感じる父親についてのまとめ
子育てに向いてないと感じる父親の現状と対策のまとめ
今回は子育てに向いてないと感じる父親について幅広く調査しお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・父親が子育てに向いてないと感じることは資質の問題ではなく環境や経験不足が主な原因である
・日本では長年父親は稼ぎ手、母親は育児という性別役割分業が存在し父親の育児参加は一般的でなかった
・1990年代以降社会の変化により父親の育児参加が求められるようになったが具体的なモデルや学習機会が不足している
・母親向けの育児教室や情報は豊富だが父親向けのものは少なく平日日中開催が多く参加しにくい
・長時間労働や職場の雰囲気により仕事と育児の両立が困難で育児に関わる時間が確保できない
・男性の育児休業取得率は17.13%と低く取得期間も短いため育児スキル習得の機会が限られる
・母親との育児観の違いや父親のやり方への批判が父親の自信喪失や意欲低下につながる
・育児スキルはおむつ替えやミルク作りなど小さなことから一つずつ習得していくことで確実に向上する
・父親向け育児教室や育児書、動画サイトなどを活用することで効率的にスキルを学べる
・夫婦で定期的に話し合いの時間を設け役割分担を明確にすることが重要である
・父親の得意な育児と母親の得意な育児を見極めそれぞれの強みを活かした分担が効果的である
・子育て支援センターや父親向け育児サークルなど外部のサポートを積極的に活用すべきである
・企業の育児支援制度や在宅勤務制度を利用することで仕事と育児の両立がしやすくなる
・育児ストレスが深刻な場合は専門家によるカウンセリングを受けることも有効である
・完璧な父親を目指す必要はなく子どもと一緒に過ごす時間そのものに価値がある
子育てに向いてないと感じることは、多くの父親が経験する自然な感情です。しかし、それは乗り越えられない壁ではなく、学習と経験によって克服できるものです。パートナーや支援サービスの力を借りながら、少しずつ育児に関わっていくことで、父親としての自信と喜びを見出すことができるでしょう。

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