近年、TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートなどのショート動画プラットフォームの台頭により、「料理動画」の人気が爆発的に高まっています。手際よく食材が刻まれる音、鍋の中で踊る具材、湯気が立ち上る完成品。これらは見る人の食欲をそそるだけでなく、エンターテインメントとして多くの人々を魅了しています。「自分もこんな素敵な料理動画を撮って発信してみたい」と考える人も多いでしょう。しかし、そこで壁となるのが「機材」の問題です。「一眼レフカメラや高価なレンズがないと無理なのではないか」と諦めてはいませんか。
実は、現在SNSでバズっている料理動画の多くは、iPhone一台で撮影・編集されています。iPhoneのカメラ性能は年々進化を遂げており、適切な設定とちょっとしたテクニックを駆使すれば、プロ顔負けのシネマティックな映像を撮ることが十分に可能です。大切なのは、高価な機材よりも「光の操り方」や「構図」、「演出の工夫」です。
本記事では、iPhoneを使った料理動画の撮り方について、基礎的な設定から、視聴者を惹きつける高度な撮影テクニックまでを幅広く調査しました。機材にお金をかけず、アイデアと工夫で「美味しそう!」と言わせる動画を作るためのノウハウを徹底解説します。
iPhoneで料理動画を撮影する前の準備とは?撮り方の基礎設定を幅広く調査
料理動画のクオリティを左右するのは、撮影ボタンを押す前の「準備」の段階です。いくら美味しい料理を作っても、カメラの設定が間違っていたり、環境が整っていなかったりすれば、その魅力は半減してしまいます。ここでは、iPhoneのポテンシャルを最大限に引き出すための設定や、撮影環境の整え方について詳しく解説します。
高画質で撮るためのカメラ設定とグリッド線の活用
まず最初に行うべきは、iPhoneのカメラ設定の見直しです。デフォルトの設定のまま撮影しているケースも多いですが、動画のクオリティを上げるためには、より高精細で滑らかな映像設定にする必要があります。
「設定」アプリから「カメラ」→「ビデオ撮影」と進み、解像度を「4K」、フレームレートを「60fps」に設定するのが現在の主流です。4Kはフルハイビジョンの4倍の画素数があり、食材の質感やソースの艶を鮮明に記録できます。また、60fps(1秒間に60コマ)にすることで、調理中の素早い手の動きも滑らかに表現でき、後からスローモーション編集をする際にもカクつきにくくなります。ただし、データ容量が大きくなるため、ストレージの空き容量には注意が必要です。
次に、「グリッド線」の表示をオンにします。画面が縦横に9分割されるこの線を目安にすることで、水平垂直が取れた安定感のある構図を作ることができます。料理動画において、まな板やお皿が斜めに傾いていると、視聴者に違和感を与えてしまいます。グリッド線を活用し、常に水平を意識することは、プロっぽい映像への第一歩です。
さらに重要なのが「AE/AFロック(露出・ピント固定)」です。調理中は手が動いたり湯気が出たりするため、オートフォーカスのままだとピントや明るさが激しく変動し、見づらい映像になってしまいます。被写体(料理)を長押しして「AE/AFロック」をかけ、さらに太陽マークをスライドさせて少し明るさを調整(露出補正)してから撮影を開始するのが鉄則です。
料理を美味しく見せるライティング(照明)の重要性
「写真は光で描く絵」と言われますが、動画も同様です。特に料理動画において、ライティングは「美味しそうに見えるかどうか(シズル感)」を決定づける最重要要素です。暗いキッチンで蛍光灯の下で撮影した料理は、青白く不健康に見えてしまいがちです。
最も美しく撮れるのは「自然光」です。晴れた日の午前中から昼過ぎにかけて、レースのカーテン越しの柔らかな光が入る窓際で撮影するのがベストです。直射日光は影が強く出すぎてしまうため、避けるか、ディフューザー(散乱板)を使って光を和らげます。
光の当たる方向も重要です。料理を正面から照らす「順光」よりも、斜め後ろや横から光が当たる「半逆光」や「サイド光」の方が、食材の立体感や表面の凹凸、艶感が強調され、ドラマチックな映像になります。
自然光での撮影が難しい場合や、夜間に撮影する場合は、撮影用のLEDライトを使用します。その際も、天井の照明は消し、撮影用ライト一灯で陰影を作ると雰囲気が出ます。リングライトを使う場合は、料理にリング状の反射が映り込まないよう角度に注意するか、ソフトボックスを使って光を拡散させるのがポイントです。
ブレを防ぎ定点撮影を実現する三脚とアームの選び方
料理動画には、手持ち撮影ならではの臨場感が必要なシーンもありますが、基本となる調理工程の撮影には「固定撮影」が欠かせません。片手でiPhoneを持ちながら片手で料理をするのは危険ですし、映像がブレて視聴者が酔ってしまう原因になります。
必須アイテムとなるのが、スマートフォン用の「三脚」です。さらに、料理動画特有の「真上からの視点(俯瞰撮影)」を撮るためには、垂直方向にカメラをセットできる「俯瞰撮影用アーム」や「ブームアーム」機能付きの三脚があると便利です。最近では、100円ショップのグッズを組み合わせて簡易的な俯瞰撮影セットを自作する人もいますが、安定性を考えると専用の機材を導入するのが無難です。
三脚を選ぶ際は、高さの調整範囲が広いもの、そして脚が映り込みにくい構造のものを選ぶと良いでしょう。また、手元の細かい作業を撮るために、卓上で使えるミニ三脚もあると便利です。ゴリラポッドのように脚が自在に曲がるタイプなら、キッチンの棚や換気扇フードなどに巻き付けて、ユニークなアングルから撮影することも可能になります。
生活感を消して世界観を作る背景とスタイリングのコツ
魅力的な料理動画に共通しているのは、「生活感の排除」と「統一された世界観」です。どれだけ料理が美しくても、背景に洗っていない食器や調味料のボトル、派手な色のスポンジなどが映り込んでいると、一気に現実へと引き戻されてしまいます。
撮影する際は、画角に入る範囲の余計なものをすべて片付けます。その上で、背景となるテーブルやクロスの色選びにこだわります。木目調のテーブルなら温かみのあるカフェ風に、大理石調やコンクリート調のシートを敷けばスタイリッシュでモダンな印象になります。これらの背景シートは安価で入手可能で、敷くだけでキッチンの雰囲気をガラリと変えることができます。
また、使用する調理器具やお皿のトーンを揃えることも大切です。例えば、ナチュラル系なら木製のカッティングボードやホーロー鍋、シック系なら黒い器やマットな質感のカトラリーなど、テーマに沿った小道具(プロップス)を用意します。さらに、メインの料理の周りに、使った食材(ハーブやスパイス、卵の殻など)やキッチンクロスを無造作に配置することで、画面に奥行きとストーリー性が生まれます。これを「スタイリング」と呼び、料理動画のクオリティを底上げする重要なテクニックです。
視聴者を惹きつけるiPhone料理動画の撮り方とは?アングルや演出を幅広く調査
準備が整ったら、いよいよ撮影の実践です。単に調理工程を記録するだけでは、視聴者はすぐに飽きてしまいます。最後まで見てもらうためには、映像に変化を持たせ、視覚と聴覚を刺激する工夫が必要です。ここでは、iPhoneの機能を活かしたアングルワークや、シズル感を演出するための具体的な撮影テクニックについて調査しました。
真上・斜め・接写を使い分けるアングルの黄金比
料理動画のアングルには、大きく分けて3つの基本パターンがあります。これらを効果的に組み合わせることで、テンポの良い動画に仕上がります。
1つ目は「真上(俯瞰)アングル」です。「Tasty」などの動画メディアで定着したスタイルで、材料の配置や切り方、混ぜ方などが一目瞭然で伝わります。レシピ動画として情報を正しく伝えるのに最も適したアングルであり、動画のベースとなります。このアングルでは、お皿やまな板の配置バランスが重要になるため、グリッド線を最大限に活用します。
2つ目は「斜め45度アングル」です。人間が普段食事をする時の視点に近く、料理の立体感やボリューム感を伝えるのに適しています。特に、ハンバーグの厚みや、ケーキの層、パンケーキの積み重なりなどを表現したい時に有効です。このアングルでは、背景のボケ味も活かせるため、iPhoneの「シネマティックモード」を使うと、一眼レフのような深みのある映像が撮れます。
3つ目は「接写(寄り)アングル」です。食材に極限まで近づき、ディテールを映し出します。肉の表面で脂が弾ける様子、野菜の水滴、ソースがとろりと垂れる瞬間など、いわゆる「シズル感」を演出するカットです。iPhoneのマクロ撮影機能やズーム機能を使い、視聴者の本能に訴えかけます。
これらのアングルを、例えば「材料紹介は真上」「調理中は斜め」「完成シーンは接写」といったように切り替えることで、視聴者を飽きさせない構成を作ることができます。
シズル感を音で伝えるASMRとマイクの活用術
動画における「音」は、画質と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。野菜を刻む「トントン」という音、肉を焼く「ジュワー」という音、揚げ物の「パチパチ」という音。これらの環境音(ASMR)は、視聴者の食欲をダイレクトに刺激します。BGMを乗せる場合でも、調理音を完全に消さず、バランス良くミックスするのがトレンドです。
iPhoneの内蔵マイクも高性能ですが、調理音をよりクリアに、臨場感たっぷりに収録するには、外付けのマイクを使用することをおすすめします。iPhoneのLightning端子やUSB-C端子に直接接続できる小型のガンマイクや、ワイヤレスのピンマイクなどが販売されています。これらを使うことで、換気扇の音や冷蔵庫のブーンというノイズを低減し、目的の音だけを拾うことができます。
もし外付けマイクがない場合は、iPhoneのマイク部分を手で覆わないように注意し、できるだけ音源に近づけて撮影します。また、調理中は無駄な話し声や生活音(テレビの音など)が入らないように環境を静かに保つことも大切です。
スローモーションやタイムラプスを使ったメリハリ演出
映像に時間の緩急をつけることも、プロっぽい動画にするためのテクニックです。iPhoneの標準機能である「スローモーション」と「タイムラプス」を使い分けましょう。
スローモーションは、一瞬の美しい動きを強調したい時に使います。例えば、粉をふるうシーン、卵を割る瞬間、仕上げにオリーブオイルを回しかけるシーン、完成した料理から湯気が立ち上る様子などです。これらをスローで見せることで、映像に情緒と高級感が生まれます。ただし、多用しすぎると間延びしてしまうため、ここぞというポイントに絞って使うのがコツです。
一方、タイムラプス(早送り)は、単調で長い作業を短縮して見せるのに適しています。玉ねぎを飴色になるまで炒める工程や、パン生地をこねる工程、オーブンの中で生地が膨らんでいく様子などです。長い時間を数秒に圧縮することで、変化の面白さを伝えつつ、動画のテンポを崩さずに工程を見せることができます。
編集を楽にするための「カット割り」と撮影段取り
撮影後の編集作業をスムーズにし、動画の完成度を高めるためには、撮影段階での「カット割り」の意識が不可欠です。漫然とカメラを回し続けるのではなく、「必要なシーンだけを撮って、不要な部分は撮らない」のが基本です。
具体的には、1つの動作が終わるごとに録画を停止します。「野菜を洗う」→停止→「切る」→停止→「鍋に入れる」→停止、といった具合です。これにより、編集時に不要な部分をトリミングする手間が省けます。また、シーンの変わり目でアングルを変えることで、自然と映像にリズムが生まれます。
さらに、「トランジション(場面転換)」を意識した撮影も有効です。例えば、食材をカメラのレンズに向かって投げたり、手でレンズを覆って暗転させたり、フライパンを振る瞬間にカメラを動かしたりする動作を入れておくと、編集時にそれらを繋ぎ合わせることで、魔法のように場面が変わるカッコいい動画を作ることができます。
事前の段取り(ミザンプラス)も重要です。調理中に調味料を探したり、計量したりしていると、撮影が中断し、光の状態も変わってしまいます。必要な材料はすべて計量し、小皿に用意しておく。使う器具も手元に揃えておく。まるで料理番組の収録のように準備を整えてから撮影を開始することが、失敗のない撮影への近道です。
iPhoneでの料理動画の撮り方まとめ
iPhone一台あれば、世界中の人々を魅了する美しい料理動画を作ることは十分に可能です。高価なカメラがなくとも、4K設定やグリッド線の活用、自然光や照明の工夫、そしてアングルや音へのこだわりを持つことで、映像のクオリティは劇的に向上します。
料理動画は、単なるレシピの伝達手段を超え、作り手の世界観や美意識を表現するアート作品のような側面も持っています。まずは簡単な料理から始めて、自分だけのアングルやスタイルを見つけてみてください。試行錯誤を繰り返すうちに、きっと「美味しそう!」というコメントが溢れる動画が撮れるようになるはずです。
iPhone料理動画の撮り方についてのまとめ
今回はiPhoneを使った料理動画の撮り方についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・iPhoneのカメラ設定は4K60fpsにすることで高画質かつ滑らかな映像になる
・グリッド線を表示させて水平垂直を意識することが構図安定の基本である
・撮影中はAE/AFロック機能を使って明るさとピントを固定する必要がある
・料理動画のライティングは自然光の半逆光やサイド光が最も適している
・夜間撮影では部屋の照明を消し撮影用ライト一灯で陰影を作ると良い
・手ブレを防ぎ俯瞰撮影を行うために専用の三脚とアームを用意する
・背景の生活感を排除しスタイリングシートや小物で世界観を統一する
・真上からのアングルはレシピ工程を分かりやすく伝えるのに最適である
・斜め45度のアングルは料理の立体感やボリューム感を強調できる
・接写とマクロ撮影を活用してシズル感のある映像を演出する
・外付けマイクを使用して調理音をクリアに録音すると臨場感が増す
・スローモーションは湯気や液体を注ぐシーンなど強調したい場面に使う
・タイムラプスは混ぜる工程や焼成工程などの時間経過を圧縮して見せる
・ワンカットごとに撮影を止めることで編集作業がスムーズになる
・調理器具や食材を事前に計量・配置するミザンプラスが成功の鍵である
誰でも持っているiPhoneが、使い方次第でプロ仕様のシネマカメラに変わります。
今日の夕食作りから、ぜひスマホを片手に撮影に挑戦してみてください。
あなたの料理が、画面の向こうの誰かの食欲と心を動かすかもしれません。

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