給与明細を見ると、様々な項目から控除が行われていることに気づきます。健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などは比較的よく知られていますが、「子ども・子育て拠出金」という項目について詳しく理解している方は少ないかもしれません。特に、賞与を受け取った際にも、この拠出金が控除されているのかどうか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
子ども・子育て拠出金は、平成27年4月に「子ども・子育て支援法」に基づいて創設された社会保険料の一つです。少子化対策や子育て支援のための財源として活用されており、企業が全額を負担する仕組みとなっています。つまり、従業員の給与から直接控除されるわけではありませんが、企業側が従業員の報酬額に応じて負担しており、間接的には労働者の報酬に影響を与える可能性があります。
厚生労働省の統計によると、令和6年度の子ども・子育て拠出金の料率は、標準報酬月額および標準賞与額の0.36%となっています。この料率は年々引き上げられてきており、平成27年度の0.15%から段階的に増加してきました。少子化対策の重要性が高まる中、今後も料率の見直しが検討される可能性があります。
本記事では、子ども・子育て拠出金が賞与からも控除されるのか、その計算方法はどうなっているのか、そして実際の負担額はどの程度なのかを幅広く調査し、詳しく解説していきます。賞与を受け取る際に知っておくべき情報を網羅的に提供しますので、ぜひ最後までお読みください。
子ども・子育て拠出金は賞与からも控除されるのか
子ども・子育て拠出金が賞与からも控除の対象となるのか、まずはこの基本的な疑問について詳しく見ていきましょう。制度の仕組みや法的根拠を理解することで、給与明細の内容をより正確に把握できるようになります。
子ども・子育て拠出金の基本的な仕組み
子ども・子育て拠出金は、子ども・子育て支援法に基づいて平成27年4月から開始された制度です。この拠出金は、少子化対策や子育て支援のための財源として活用され、具体的には認定こども園、幼稚園、保育所などの給付、地域の子ども・子育て支援事業などに充てられています。
最も重要な特徴は、この拠出金が全額事業主負担であるという点です。健康保険料や厚生年金保険料のように労使折半ではなく、企業や事業主が単独で負担します。したがって、従業員の給与明細には通常、子ども・子育て拠出金の控除項目は表示されません。ただし、企業によっては参考情報として記載している場合もあります。
拠出金の対象となるのは、厚生年金保険の被保険者を雇用している事業主です。つまり、厚生年金保険に加入している従業員がいる企業は、必ずこの拠出金を納付する義務があります。個人事業主であっても、従業員を雇用して厚生年金保険に加入させている場合は対象となります。
拠出金の算定基礎となるのは、厚生年金保険の標準報酬月額および標準賞与額です。これは、健康保険料や厚生年金保険料の計算と同じ基準が使われることを意味します。標準報酬月額は、従業員の月々の給与額を一定の等級に当てはめたもので、標準賞与額は賞与の実支給額から千円未満を切り捨てたものです。
子ども・子育て拠出金の料率は、令和6年度現在で0.36%となっています。この料率は、標準報酬月額と標準賞与額の両方に適用されます。過去を振り返ると、平成27年度は0.15%でスタートし、平成28年度に0.20%、平成29年度に0.23%、平成31年度に0.29%、令和2年度に0.34%、そして令和4年度に0.36%へと段階的に引き上げられてきました。
この拠出金によって集められた財源は、内閣府の子ども・子育て本部が管轄し、市区町村や都道府県を通じて、実際の子育て支援事業に配分されます。具体的には、保育所の運営費、認定こども園の給付費、放課後児童クラブの運営費、一時預かり事業、地域子育て支援拠点事業など、多岐にわたる事業に活用されています。
企業規模に関わらず、厚生年金保険の適用事業所であればすべて対象となります。大企業だけでなく、中小企業や零細企業、さらには数名しか従業員がいない小規模事業所でも、厚生年金保険に加入している従業員がいる限り、拠出金の納付義務があります。
拠出金は、健康保険料や厚生年金保険料と一緒に、毎月まとめて日本年金機構に納付されます。納付期限は翌月末日となっており、他の社会保険料と同じスケジュールで処理されます。未納の場合は延滞金が発生する可能性があるため、企業は確実に納付する必要があります。
なお、子どもの有無や従業員の年齢、性別などは拠出金の計算に影響しません。独身者であっても、子どもがいない世帯であっても、その従業員を雇用している企業は拠出金を負担します。これは、少子化対策が社会全体で取り組むべき課題であるという考え方に基づいています。
賞与からの控除の有無と法的根拠
結論から言うと、子ども・子育て拠出金は賞与からも控除の対象となります。正確には、「控除」ではなく「事業主が負担する」という表現が適切ですが、賞与に対しても月給と同様に拠出金が発生します。
この根拠となるのが、子ども・子育て支援法第69条および第70条の規定です。同法では、「厚生年金保険の被保険者を使用する事業主は、子ども・子育て支援に要する費用に充てるため、子ども・子育て拠出金を納付しなければならない」と定められており、その算定基礎として「標準報酬月額及び標準賞与額」が明記されています。
つまり、法律上、賞与も拠出金の計算対象に含まれることが明確に規定されているのです。これは、厚生年金保険料や健康保険料が月給だけでなく賞与からも徴収されるのと同じ考え方です。従業員の総報酬額に応じて公平に負担を求めるという社会保険制度の基本原則が、子ども・子育て拠出金にも適用されています。
厚生年金保険法における標準賞与額の定義も重要です。標準賞与額とは、「賞与の額から千円未満を切り捨てた額」と定義されており、年度累計で上限が設定されています。厚生年金保険の場合、同一年度内(4月から翌年3月まで)に支給された賞与の累計額が150万円を超える部分は、標準賞与額に含まれません。この上限は子ども・子育て拠出金の計算にも適用されます。
日本年金機構が発行する事業主向けの手引きにも、「子ども・子育て拠出金は、厚生年金保険の標準報酬月額および標準賞与額に拠出金率を乗じて計算します」と明記されています。これにより、実務上も賞与が計算対象に含まれることが確認できます。
企業の経理処理においても、賞与支給時には子ども・子育て拠出金を計算し、翌月の社会保険料とともに納付する必要があります。賞与支給月の翌月に提出する「賞与支払届」には、各従業員の標準賞与額が記載され、それに基づいて拠出金が計算されます。
ただし、繰り返しになりますが、この拠出金は事業主が全額負担するため、従業員の手取り額から直接差し引かれるわけではありません。しかし、企業の人件費コストとしては確実に発生しており、間接的には賃金水準や賞与額の決定に影響を与える可能性があります。
賞与の定義についても確認しておきましょう。社会保険上の賞与とは、「名称にかかわらず、労働の対償として支払われるもののうち、年3回以下支給されるもの」を指します。ボーナス、賞与、期末手当、決算手当など、名称は問いません。年4回以上支給される場合は、賞与ではなく報酬として標準報酬月額の算定対象となります。
したがって、夏季賞与(夏のボーナス)と冬季賞与(冬のボーナス)のように、年2回の賞与を支給している企業では、そのどちらの賞与に対しても子ども・子育て拠出金が発生します。決算賞与など臨時的な賞与であっても、年3回以内であれば拠出金の対象となります。
月給と賞与での控除の違い
子ども・子育て拠出金は、月給(標準報酬月額)からも賞与(標準賞与額)からも発生しますが、計算方法には若干の違いがあります。これらの違いを理解することで、企業の人事労務担当者だけでなく、従業員自身も自社の負担額をより正確に把握できるようになります。
まず、標準報酬月額と標準賞与額の決定方法が異なります。標準報酬月額は、従業員の4月から6月の3ヶ月間の報酬月額の平均を算出し、それを保険料額表の等級に当てはめて決定されます。この標準報酬月額は、原則として1年間固定され、毎年9月に改定されます(定時決定)。一方、標準賞与額は、賞与が支給されるたびに実際の支給額から千円未満を切り捨てた額として決定されます。
計算の頻度も違います。月給に対する拠出金は毎月計算され、年12回発生します。対して、賞与に対する拠出金は、賞与が支給されるタイミングでのみ発生します。多くの企業では年2回(夏季と冬季)ですが、企業によっては年1回や年3回の場合もあります。
上限の適用方法も異なります。標準報酬月額には等級ごとの上限があり、令和6年度現在、厚生年金保険の最高等級は32等級の650,000円です。これを超える月給をもらっている従業員でも、標準報酬月額は650,000円として計算されます。一方、標準賞与額は1回あたりの上限はなく、年度累計で150万円という上限があります。つまり、1回の賞与が100万円であっても、その全額が標準賞与額となりますが、年度内の累計が150万円を超えた部分は対象外となります。
具体的な例で見てみましょう。月給30万円、賞与が年2回で各50万円の従業員の場合を考えます。標準報酬月額は30万円(等級による)として、毎月の拠出金は300,000円×0.36%=1,080円(企業負担)となります。年間では1,080円×12ヶ月=12,960円です。賞与からは、各回50万円×0.36%=1,800円、年2回で3,600円の拠出金が発生します。年間合計では16,560円が企業の負担となります。
計算のタイミングも違います。月給に対する拠出金は、当月分を翌月末に納付します。例えば、6月分の拠出金は7月末に納付されます。賞与に対する拠出金は、賞与支給月の翌月末に納付されます。6月に夏季賞与を支給した場合、その拠出金は7月末に納付されることになります。
提出する書類も異なります。月給については、毎年7月に「算定基礎届」を提出し、標準報酬月額を決定します。賞与については、支給するたびに「賞与支払届」を支給日から5日以内に提出する必要があります。この届出に基づいて標準賞与額が確定し、拠出金が計算されます。
なお、賞与が支給されない月には、当然ながら賞与に対する拠出金は発生しません。また、賞与の支給額が非常に少ない場合でも、千円未満を切り捨てた後に1,000円以上あれば、標準賞与額として拠出金の対象となります。
企業の会計処理においても扱いが若干異なります。月給に対する拠出金は毎月定期的に発生するため、月次の人件費として計上されます。賞与に対する拠出金は、賞与支給時にまとめて発生するため、賞与に関連する人件費として計上されます。
控除される時期とタイミング
子ども・子育て拠出金が実際に企業から納付されるタイミングについて、詳しく見ていきましょう。これを理解することで、企業の資金繰りや、従業員への影響をより正確に把握できます。
月給に対する拠出金の納付時期は、健康保険料や厚生年金保険料と同じスケジュールで処理されます。具体的には、当月分の保険料を翌月末日までに納付します。例えば、6月分の給与に対する拠出金は、7月31日までに納付されます。納付期限が休日の場合は、翌営業日が期限となります。
賞与に対する拠出金も同様に、賞与支給月の翌月末日が納付期限です。6月10日に夏季賞与を支給した場合、その拠出金は7月31日までに納付されます。12月10日に冬季賞与を支給した場合は、翌年1月31日までの納付となります。
実務的な流れを詳しく説明すると、まず企業は賞与を支給する際に「賞与支払届」を作成します。この届出には、各従業員の賞与支給額と標準賞与額を記載します。この届出は、賞与支給日から5日以内に日本年金機構(または健康保険組合)に提出する必要があります。
届出を受けた日本年金機構は、標準賞与額に基づいて各種社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)を計算し、企業に対して納付額を通知します。通常、この通知は賞与支給月の中旬から下旬に行われます。
企業は、通知された金額を翌月末までに納付します。納付方法は、口座振替、納付書による金融機関での支払い、電子納付などがあります。多くの企業は口座振替を利用しており、指定された日に自動的に引き落とされます。
注意すべき点として、賞与支払届の提出が遅れると、納付額の確定も遅れ、場合によっては納付期限に間に合わないことがあります。提出期限(支給日から5日以内)を守ることが重要です。万が一提出が遅れた場合でも、納付期限は変わらないため、見込み額で納付する必要が生じることもあります。
年度をまたぐ賞与の場合も、同じルールが適用されます。例えば、3月に決算賞与を支給した場合、その拠出金は4月末に納付されます。この場合、4月には3月分の月給に対する拠出金と、3月の決算賞与に対する拠出金の両方を納付することになります。
また、標準賞与額の年度累計150万円の上限は、4月から翌年3月までの年度で管理されます。例えば、3月に100万円の賞与を受け取り、4月にも100万円の賞与を受け取った場合、3月分は前年度、4月分は新年度として扱われるため、どちらも全額が標準賞与額の対象となります。
未納の場合のペナルティについても触れておきましょう。社会保険料(子ども・子育て拠出金を含む)を納付期限までに納付しなかった場合、延滞金が発生します。延滞金の率は、納付期限の翌日から3ヶ月以内とそれ以降で異なり、年7.3%から14.6%程度となっています(経済情勢により変動します)。さらに、長期間未納が続くと、財産の差し押さえなどの強制徴収が行われる可能性もあります。
一方で、企業が経営困難などの理由で一時的に納付が難しい場合は、年金事務所に相談することで納付猶予や分割納付などの措置が認められることもあります。ただし、これは特例的な対応であり、原則として期限内の納付が求められます。
従業員の立場から見ると、賞与から拠出金が直接引かれるわけではないため、実感しにくい部分があります。しかし、企業が負担している人件費の一部であることを理解し、間接的には自分たちの報酬にも影響する可能性があることを認識しておくことが大切です。
賞与から引かれる子ども・子育て拠出金の計算方法
賞与から発生する子ども・子育て拠出金の具体的な計算方法について、詳しく解説していきます。実際の数字を使ったシミュレーションも交えて、理解を深めていきましょう。
具体的な計算式と料率
子ども・子育て拠出金の計算は、基本的に非常にシンプルです。賞与に対する拠出金の計算式は以下の通りです。
拠出金額=標準賞与額×拠出金率
令和6年度現在の拠出金率は0.36%ですので、この率を使用します。標準賞与額は、実際に支給された賞与の額から千円未満を切り捨てた金額です。
例えば、賞与が523,456円だった場合、千円未満を切り捨てると523,000円が標準賞与額となります。これに0.36%を乗じると、523,000円×0.0036=1,882.8円となります。ここでも円未満を切り捨てるため、最終的な拠出金額は1,882円となります。
計算の際の端数処理について詳しく説明します。まず、賞与額から千円未満を切り捨てて標準賞与額を算出します。次に、標準賞与額に拠出金率を乗じます。最後に、計算結果の円未満を切り捨てて、最終的な拠出金額とします。この手順を正確に踏むことが重要です。
料率の0.36%という数字について、もう少し詳しく見てみましょう。0.36%は、1,000円あたり3.6円、10万円あたり360円、100万円あたり3,600円という計算になります。これを覚えておくと、おおよその金額を暗算で求めることができます。
拠出金率は過去に何度も改定されています。制度開始時の平成27年度は0.15%でしたが、平成28年度に0.20%、平成29年度に0.23%、平成31年度(令和元年度)に0.29%、令和2年度に0.34%、そして令和4年度に現在の0.36%へと引き上げられました。今後も少子化対策の充実に伴い、料率が変更される可能性があります。
料率の改定は、通常、年度の始まりである4月に行われます。企業の人事労務担当者は、毎年度初めに最新の料率を確認し、給与計算システムに反映させる必要があります。料率を誤って古いまま使用していると、正確な拠出金額を計算できず、後で追徴や還付が必要になる場合があります。
健康保険料や厚生年金保険料と比較すると、子ども・子育て拠出金の料率は比較的低く設定されています。参考までに、令和6年度の厚生年金保険料率は18.3%(労使折半で各9.15%)、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率は都道府県により異なりますが、おおむね10%前後(労使折半で各5%前後)です。これらと比べると、0.36%という料率は小さく感じられるかもしれませんが、全額事業主負担であることを考慮する必要があります。
計算に使用する標準賞与額には、年度累計の上限があることも重要です。厚生年金保険では、同一年度内(4月から翌年3月)の標準賞与額の累計が150万円を超える部分は対象外となります。ただし、健康保険では年3回まで、1回あたり573万円という別の上限があります。子ども・子育て拠出金は厚生年金保険に準じるため、年度累計150万円が上限となります。
複数回賞与がある場合の計算方法も確認しておきましょう。年2回賞与がある場合、それぞれの賞与について個別に標準賞与額を算出し、拠出金を計算します。6月の賞与が50万円、12月の賞与が60万円の場合、6月分は500,000円×0.36%=1,800円、12月分は600,000円×0.36%=2,160円となり、年間では3,960円の拠出金が企業から納付されます。
賞与額別の控除額シミュレーション
実際の賞与額に応じて、子ども・子育て拠出金がどの程度発生するのか、具体的なシミュレーションを行ってみましょう。これにより、企業の負担額や、間接的に従業員の報酬に与える影響をより実感できるようになります。
まず、比較的少額の賞与の場合を見てみます。賞与が10万円の場合、標準賞与額は100,000円、拠出金は100,000円×0.36%=360円となります。賞与が20万円の場合は、200,000円×0.36%=720円です。30万円の場合は1,080円、40万円の場合は1,440円、50万円の場合は1,800円となります。
中程度の賞与額についても計算してみましょう。賞与が60万円の場合、拠出金は2,160円です。70万円で2,520円、80万円で2,880円、90万円で3,240円、100万円で3,600円となります。100万円の賞与に対して約3,600円という金額は、企業側からすると比較的大きな負担ではありませんが、従業員数が多い企業では総額としては相当な金額になります。
高額な賞与の場合も見ておきましょう。賞与が150万円の場合、拠出金は5,400円です。200万円の場合は7,200円、250万円の場合は9,000円となります。ただし、年度累計150万円を超える部分は標準賞与額の対象外となるため、実際の計算では注意が必要です。
年2回賞与がある一般的なケースでシミュレーションしてみます。夏季賞与60万円、冬季賞与70万円の場合、夏季分は2,160円、冬季分は2,520円で、年間合計4,680円が企業負担となります。これに月給に対する拠出金を加えると、1人の従業員に対して年間で相当額の拠出金が発生することがわかります。
企業規模別の負担総額も試算してみましょう。従業員100名の企業で、平均賞与が年2回で各50万円の場合、1人あたり年間3,600円、100名で360,000円の拠出金が賞与から発生します。これに月給分を加えると、さらに大きな金額になります。従業員1,000名の企業であれば、賞与分だけで年間360万円、月給分を含めると数千万円規模の拠出金を負担していることになります。
業種別の特徴も考慮に入れる必要があります。金融業や大手メーカーなど、賞与水準が高い業種では、拠出金の負担も相対的に大きくなります。逆に、賞与の支給が少ない業種や、そもそも賞与制度がない企業では、月給に対する拠出金のみとなります。
従業員の立場から見ると、拠出金は直接的に手取りから引かれるわけではありませんが、企業の人件費として計上されています。仮に拠出金制度がなければ、その分が賃金や賞与に還元される可能性もあるという見方もできます。ただし、子ども・子育て支援という社会的な目的のための拠出であることを理解することも重要です。
千円未満の端数処理による影響も見ておきましょう。賞与が499,999円の場合、標準賞与額は499,000円となり、拠出金は1,796円です。一方、賞与が500,001円の場合、標準賞与額は500,000円で、拠出金は1,800円となります。わずか2円の違いですが、1,000円の差で約3.6円の違いが生じることになります。
年収に占める拠出金の割合も計算してみましょう。年収500万円(月給30万円、賞与年2回で各50万円)の従業員の場合、月給に対する拠出金が年間約13,000円、賞与に対する拠出金が年間約3,600円で、合計約16,600円となります。これは年収の約0.33%に相当します。企業はこの金額を従業員1人あたり負担していることになります。
標準賞与額の上限と注意点
子ども・子育て拠出金を計算する際の標準賞与額には、年度累計の上限が設定されています。この上限を理解し、正しく適用することが、正確な拠出金計算のために重要です。
厚生年金保険における標準賞与額の上限は、年度(4月から翌年3月)累計で150万円です。子ども・子育て拠出金も厚生年金保険に準じるため、この上限が適用されます。つまり、年度内に支給された賞与の合計が150万円を超える場合、超えた部分は標準賞与額に含まれず、拠出金の計算対象外となります。
具体例で説明しましょう。6月に賞与100万円、12月に賞与80万円を受け取った従業員の場合、年度累計では180万円となります。しかし、上限が150万円なので、標準賞与額の累計は150万円となり、超過した30万円は対象外です。実際の計算では、6月分は100万円×0.36%=3,600円、12月分は50万円(150万円-100万円)×0.36%=1,800円となり、合計5,400円が拠出金となります。
上限の判定時期も重要です。標準賞与額は、賞与が支給されるたびに累計されていきます。上記の例で、12月の賞与時点で既に6月に100万円の支給があったため、12月分は残り50万円分のみが対象となります。もし12月の賞与が40万円であれば、全額が対象となり、年度累計では140万円となります。
年度をまたぐケースの処理にも注意が必要です。3月に100万円、4月に100万円の賞与を受け取った場合、3月分は前年度、4月分は新年度として扱われます。そのため、3月分は全額(上限内であれば)が対象となり、4月分も新年度の計算として全額が対象となります。年度の区切りである3月と4月では、累計がリセットされることを理解しておく必要があります。
健康保険との違いにも触れておきましょう。健康保険における標準賞与額の上限は、年3回まで、1回につき573万円(年度累計ではなく1回あたり)という設定になっています。これは厚生年金保険の年度累計150万円とは異なります。子ども・子育て拠出金は厚生年金保険に準じるため、年度累計150万円の方が適用されます。
高額な賞与を支給する企業では、この上限を理解した計算が必須です。外資系企業や成果報酬型の企業では、賞与が年収の大半を占めることもあり、標準賞与額が上限に達するケースも珍しくありません。人事労務担当者は、各従業員の年度内の賞与累計を正確に管理する必要があります。
上限を超えた場合の届出についても説明します。「賞与支払届」には、実際の賞与支給額と標準賞与額の両方を記載します。年度累計が上限を超える場合、標準賞与額の欄には上限額までの金額を記載し、備考欄に累計が上限に達している旨を記載します。これにより、日本年金機構側でも正確な処理が行われます。
中途入社や退職の場合の取り扱いも確認しておきましょう。年度途中で入社した従業員は、その年度の残り期間での累計が計算されます。例えば、10月に入社し、12月に賞与100万円、翌年3月に賞与80万円を受け取った場合、その年度での累計は150万円以内なので、全額が標準賞与額の対象となります。退職時に支給される賞与についても、同様に標準賞与額の対象となり、年度累計に含まれます。
計算ミスを防ぐためのチェックポイントをまとめておきます。第一に、年度の区切り(4月開始、3月終了)を正確に把握すること。第二に、各従業員の年度内賞与支給履歴を正確に記録すること。第三に、累計が上限に近づいている従業員については、次回賞与時に上限を超えないか事前確認すること。第四に、給与計算システムに年度累計管理機能がある場合は、正しく設定されているか確認することです。
最後に、将来の制度変更の可能性についても触れておきます。標準賞与額の上限は、制度の見直しにより変更される可能性があります。過去には厚生年金保険の標準報酬月額の上限等級が変更されたこともあります。人事労務担当者は、毎年度、最新の制度内容を確認し、変更があれば速やかに対応する必要があります。厚生労働省や日本年金機構のウェブサイトで最新情報をチェックすることが推奨されます。
まとめ:子ども・子育て拠出金と賞与からの控除について
賞与における子ども・子育て拠出金のまとめ
今回は子ども・子育て拠出金が賞与からも控除の対象となるのか、その計算方法や負担額についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・子ども・子育て拠出金は賞与からも発生し、月給と同様に標準賞与額を基準に計算される
・拠出金は全額事業主負担であり、従業員の手取り額から直接控除されるわけではない
・令和6年度現在の拠出金率は0.36%で、標準報酬月額と標準賞与額の両方に適用される
・標準賞与額は実際の賞与支給額から千円未満を切り捨てた金額として算出される
・賞与に対する拠出金の計算式は「標準賞与額×0.36%」で、円未満は切り捨てとなる
・標準賞与額には年度累計150万円という上限があり、超過分は拠出金の対象外となる
・賞与が年2回支給される場合、それぞれの賞与について個別に拠出金が計算される
・賞与支給月の翌月末日が拠出金の納付期限であり、月給分と合わせて納付される
・賞与50万円の場合、企業負担の拠出金は約1,800円、100万円の場合は約3,600円となる
・拠出金率は平成27年度の0.15%から段階的に引き上げられ、今後も変更の可能性がある
・年度の区切りは4月から翌年3月までであり、年度をまたぐ賞与は別々に計算される
・健康保険の標準賞与額上限とは異なり、子ども・子育て拠出金は厚生年金保険に準じる
・従業員100名で平均賞与が年2回各50万円の企業では、年間約36万円の拠出金が賞与から発生する
・拠出金により集められた財源は認定こども園、保育所、地域の子育て支援事業などに活用される
子ども・子育て拠出金は、少子化対策という社会的に重要な目的のために企業が負担する制度です。賞与からも発生することを理解し、企業は正確な計算と適切な納付を行うことが求められます。従業員の皆様も、この制度が将来世代のために役立てられていることを知っていただければ幸いです。

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